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研究紹介


新しい側弯症スクリーニングシステムの構築を目指した
スマートフォンアプリケーションによる側弯症検出


北里大学医学部整形外科学 助教 上野 正喜

 思春期特発性側弯症のスクリーニングである学校脊柱検診は、検診方法や時期は指定されておらず、施設や地域により異なります。モアレトポログラフィー法やシルエッター法などが行われ、有用な検査として今もいくつかの地域で使われていますが、特殊な機材と検査技師が必要なため、どこででもすぐ行える検査ではありません。また、検診のための時間とお金の確保が必要になります。もっと人や機材や場所にとらわれずに、広く行える側弯症のスクリーニング法はないか?それをコンセプトに、側弯症スクリーニング用のスマートフォンアプリケーションを当大学で独自開発しました。場所や人目を意識することなく、また就学時間を割くことなく行える、側弯症の新しいスクリーニングとして、研究開発を進めています。

 側弯症スクリーニング用アプリケーション「CASST」(呼称キャスト:Computer assisted scoliosis screening tool)は、カメラによる立位背面と前屈位背面の撮影を2回、ジャイロセンサーによる背中の傾きのデータ取得を1回行います。立位背面の撮影を行い、撮影した画像をジャイロセンサーを用いて水平補正し、二値化して輪郭を抽出します。輪郭の各高さでの中点を設定し、それらを結んだ曲線を描きます。その近似直線を描き、近似直線の傾きをParameterとして取得します。また、近似直線から曲線が最も離れている点までの距離もParameterとして取得します。近似直線で二値化画像を二分し、左右の面積差をParameter として取得します。また、肩の高さ、 腰の高さを認識し、その線の傾きもParameter として取得します(Fig.1)。

Fig.1
 
 次に、前屈位背面の撮影を行い、同様に近似直線を描き、画像を二分し左右の面積差をParameterとして取得します(Fig.2)。

Fig.2

 最後に、前屈位で肩甲部中央の背面にスマートフォン本体を置き、背中の左右への傾きをジャイロセンサーにて計測しParameterとして取得します(Fig.3)。 



 側弯症患者と健常人ボランティアで各Parameterを比較したところ、肩の高さの傾き、 腰の高さの傾き、近似直線からの曲線への距離、前屈位での面積の左右差、背中の傾きは、側弯患者と健常者で有意な差がありました。どの程度の数値を肩鎖のカットオフ値とするかは未定ですが、検診で検出すべき20 °程度の側弯変形に対する識別能力を上げていきたいと考えています。

 スマートフォンは、若年層に特に広く普及しつつあるコンピューターとカメラを同時搭載した通信機能を有する機器であり、ジャイロセンサーとGPSも通常搭載しています。場所や人目を意識することなく、また就学時間を割くことなく行える側弯症の新しいスクリーニングツールとなり、データの送信や収集、専門施設の紹介などのシステム構築のための有用なデバイスになると考えられます。(特許出願中2012-124131)


CASSTファイルのダウンロード

研究協力者用CASST
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被験者用CASST
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